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「今日はアタシが晩御飯作る!」 「はぁあ!?」 アスカの急な申し出に面食らうシンジ。 それもそのはず、結婚して今まで自ら進んで料理をしようとしなかったアスカが この日に限って突然「作る」と言い出したのだ。 いくつかの食材の入った買い物袋を携え、エプロン・三角巾・包丁と完全武装して。 「えっ・・・でも」 不安と戸惑いを込めて僅かながらの抵抗を試みるも、 「アンタはそこで黙って見てなさい!」 「料理の一つや二つ、このアスカ様に掛かればお茶の子さいさいよ!!」 と、包丁を目の前に突きつけられれば首を縦に振るしかなく、 指を切らないかと不安になりながら、行く末を見守る事とした 「とぉう!」「やぁあ!」「てぇぇえりゃあ!!」と使徒戦さながらに食材を切り刻み、 シンジの不安を他所に無事に食材を切り終わる。 次にその材料を鍋に全て放り込み一通りの調味料を入れ、火にかける。 「あっ・・・」と指摘を入れようとすると、鋭い眼光で睨み付け即座に沈黙させられる。 どうやらアスカは意地でも自分の力で全てやり遂げたいようだ。 この時点でシンジはアスカが作りたい料理を分かっていた。 ジャガイモ、人参、玉葱、牛肉、そして調味料に醤油に砂糖、みりん。 そう『肉じゃが』である。 そして完全に調味料の割合を間違えている。 (アスカ・・・ それじゃしょっぱすぎるよ) 程無くして 「出来たッ!!」 (早やッ!!) 「へぇ、結構早く出来るんだね・・・」 とりあえずアスカが怒り出さないように助言を出す。 「当然!! アンタはいっつも愚図だから何をやるにも時間が掛かりすぎるのよ!!」 あまりにも遠まわしな助言は伝わらなかったようだ。 そして、自分の目の前に鎮座しているアスカの『肉じゃが』。 その様子を満面の笑みで見つめる。 逃げ場は残されていない。 「いただきます」 最初に箸を付けたのはジャガイモ。案の定箸が刺さらないが口の中へ・・・ 半分程しか火の通っていないジャガイモは口腔内でジャリジャリと頭蓋に響く音を立てる。 「どぉ、美味しい?」 「うっ・・・ うん、美味しいよ」 「ふっふ~ん、当然よね! このアタシが作ったんですもの! いっただっきま~す!」 そして知る事となる。自分が作った『肉じゃが』の味を・・・ (不味い) 正直、食べられた物ではなかった。 そんな物を目の前でシンジはあたかも美味しそうに次から次へと口に運んでいる。 そして彼女は怒りが込み上げてきた。 こんな料理をわざわざ『美味しい』と言ったシンジに対して 「こぉのぉ、馬鹿シンジィ~!!!」 パッァア~~~ン!! アスカは思いっきり彼の頬を引っ叩くと、脱兎の如く寝室へ逃げ込んでいった。
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補足:未来とは子供のことです まだ未来が産まれない時のことだ。 産婦人科の病院の個室にアスカは切迫流産のために緊急入院していた。 ブドウ糖の点滴の様子を見ながら不安な表情をしているシンジ。 鎮静剤が効いているのかアスカは眠っている。 シンジは医師の説明をアスカにどう話したらいいか考えている。 「五分五分ですね。 今のところ赤ちゃんは無事ですよ。18週目に入っていますから、赤ちゃんの体には異常はみられないし、心音もはっきり聞こえます。 エコーで確認しましたが元気です。 ただまた出血する可能性や早産の可能性があります。 このことは奥さんには少しの間言わないでおきましょう。」 医師はアスカの流産の処置をした後、渋い顔をしながらシンジに、万が一、子どもが早産で産まれてくる場合は帝王切開で産ませることや理由を詳しく説明した。 赤ん坊が障害児になるかもしれないなんて言うわけにいかないと思った。 「シンジ、ごめんね」鎮静剤がきれたのか、目を覚ましたアスカは泣きそうな声で謝った。 「赤ちゃんは無事だよ。だから安心してアスカ。謝らなくていいんだよ」シンジはアスカの手をそっと握った。 「どうして怒らないの?アタシ、赤ちゃんの管理できなかったのよ」アスカは泣きながらシンジに言った。 「アスカが悪いんじゃないんだ。赤ちゃんは女の子だってさ。元気だって。たまたま体調が悪かっただけだよ」というシンジの言葉にアスカは首を振って否定した。 シンジは自分を責めているアスカに何も言えなかった。 もし、母が生きていたらアスカみたいに自分を責めるのだろうかとシンジは思った。 自分は男だし、いまだ父親としての実感はないし微妙だった。 ただ、アスカの切迫流産の時、赤ん坊の障害についてのリスクを医師から話された時、無事に産まれてほしいと思ったことは確かだ。 時々、産科での検診で一緒にエコーの画像を見ながら不思議な気持ちで胎児の成長を見ていた自分には父親の自覚はなかったようだ。 ふたりの命を自分は抱えているのにアスカより成長や自覚が足りない自分が歯がゆかった。 アスカの容態が安定して退院が決まったのは一週間後だった。 アスカはシンジにおなかを触ってと言った。 シンジはアスカのおなかに手をおいた。 ピクピクっとなにか動いた感触がした。 胎動だった。 パパ、ママ、元気に生まれるからねと赤ん坊から言われた気がしたシンジだった。
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シンジ「ご馳走さまでした」 シンジ「アスカ~今日のご飯随分豪華だったね」 言いながら食器を流しに持って行くシンジ アスカ「まあね~久しぶりに張り切っちゃった」 自分の分の食器を渡しながらアスカは答える シンジ「え?何か良い事でもあった?」 アスカの食器を受け取り流しで洗いながら聞く アスカ「エヘヘッじつは~今日ね。商店街でね。」 シンジ「なんだよ。アスカもったいぶらずに言いなよ」 アスカは満面の笑みで アスカ「えぇ~どうしようかなぁ~教えようかなぁ」 シンジは機嫌のいいアスカを見て シンジ「お願いします!アスカ様。教えて下さい」 と拝むポーズをとる アスカ「しょうがないなぁ大好きなシンジの頼みだ、教えてあげよう!」 そういうと机に封筒を一枚出した シンジ「中見ていいの?」 どうぞ×2と自慢気なアスカ シンジ「何だろう?」 封筒を開ける シンジ「アスカこれは!」 テンションのあがるシンジ 得意げな顔でVサインを出すアスカ アスカ「じゃ~ん!どう?凄いでしょ!私が当てたのよ」 シンジ「商店街の福引って当たるんだね」 アスカ「ねっ、私もびっくりした」 果たして商店街で当たった物は? 次回に続きます 某有名遊園地のチケットだ アスカ「シンジまだ有給残ってたよね?」 シンジ「うん!」 アスカ「じゃあ平日に行きましょう」 シンジ「解ったよ!アスカ」 まだ興奮さめやらぬシンジ アスカ(ふふっ、あんなにはしゃいじゃって) アスカ「あ~あ私なんか今日疲れちゃったなぁ」 ソファーに座りわざとらしく肩や腕を揉むアスカ シンジ「はいはい。アスカ様。お疲れの様ですね」 シンジはアスカの肩を揉んであげる アスカにとってこういう、じゃれあいが一番好きな時間だった。勿論シンジも解っている シンジ「ありがとう。アスカ」 アスカ「どういたしまして」 シンジ「一緒にお風呂入ろうか?」 アスカ「めっずらしぃ~シンジの方から誘ってくるなんて」 シンジ「いつもはアスカがいきなり入ってくるもんね」 アスカ「なによ!嫌なの?」 シンジは笑いながら シンジ「勿論うれしいよ」 シンジ「では参りましょうか?アスカ姫」 とお姫様だっこをする アスカ「バカシンジ」 顔を真っ赤にしてアスカは言った こうして碇さん家の夜は更けていくのでした 終 劇
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シンジ自身が児童売春として補導されなければ。酷く身勝手ではあるが、ただそれだけが上手く働かない頭ではそれだけを願っていた。 右隣の刑事は警察署に後日出頭し、加害者に関する事を話して欲しいと言われ、病院で下ろされた。見た所腕には注射の跡は無いが、素人目にはわからないので見てもらえ、との事。 一応病院の中へ入り、受付の前の椅子に座り、5分位してから検査等は1つもせずに、急患がストレッチャーで運ばれてきた隙に病院を出た。 腕以外にも注射をされた跡は全く無いし、口から摂取した物は全て吐き戻した。万が一下から何か入れられていたとしても腸内洗浄は自分で出来る。 一応刑事事件に巻き込まれた事になるのだろうが、妙に適当に――シンジにとっては都合良く――抜け出せてしまって良いのかどうかという不安。 それを抱えながらも、夜間病院は健康な人間を診察しないのは至極当然だと自分に言い聞かせ、電車が残っている事を祈りつつ益へ向かった。 理由は知らないがどうにもこのマンションには余り住んでいる人間が居ないらしい。誰にも会う事無く自宅に辿り着く。 「ただいま」 ――バシュン 玄関扉を閉める音とほぼ同時にアスカが廊下のダイニングから怪訝そうな顔を出した。 「……アンタ、泊まりに行ったんじゃなかったの?」 「うん……ちょっと、帰ってきた」 「あ、そー」 短い返事を残してくるりと背を向ける。 薄水色のタンクトップに乗る華やかな色の長い髪。 風呂上がりらしい濡れ具合はシンジが様々な意味で年相応の性の持ち主ならば2人きりの同居と違って良かったと思うだろう。 別の意味でそう思う事も有るが。 ただ今は長い髪を見ると彼女を思い出す。黒く長い髪で、顔は余り覚えていないけれど、何と無く自分に似ていた。……気がする。 そのまま歩いてダイニングに入るとカーテンを開けてバスタオル1枚のミサトもタイミング良く出てきた。 「あれぇ? シンちゃん、帰ってきたの? アスカが今日も泊まりだって言ってたけど」 「断言してないわよ。ただ泊まりじゃないの? って言っただけじゃない」 言いながらアスカはミサトと入れ替わりに洗面所へと入った。 「……アスカも心配してたみたいだけど、相談してくれて良いのよ?」 ――ごくり シンジ自身にだけ嫌に大きい音で唾液を飲み込む音が響く。 口の中が空になるとそれなりに時間は経った筈なのに、妙に酸っぱい味が口の中に残っていて、それだけでまたしても嘔吐出来そうだ。 「学校で、まぁ何か有ったんでしょ?」 「え?」 引っくり返った情けない声は恥ずかしい。 「ちょっちアスカから、ね。聞いちゃって。まぁ誰かと何かが有ったーってだけで、細かい内容は聞いてないから。……それは、話したくなってからで良いから、ね」 片目を瞑ってウィンクを投げてくるミサト。 すっかり忘れていた。そう言えば学校で何か有って……忘れている。 何に腹を立てたのか思い出せず、気不味い表情が浮かんでしまう。 「あぁ、だから今は言わなくて良いってば!」 慌ててミサトが顔の前で両手を振った。 「話せば解決するってモンでもないし、愚痴りたくなった時に聞くよって意味だから」 「はぁ……」 「ンもぅ、そういうつまんなさそうな顔しない! あ、お風呂入る? 詮抜いちゃった」 舌を出す姿は流石に少しわざとらしかった。 「……シャワーだけ、入ります」 「ゴメンねぇ」 バスタオル1枚というのはこの家で暮らす女性にとって、裸よりも衣服を着用している方に近いのか、全く気にせずにミサトはそのままシンジを横切って冷蔵庫の前まで歩く。 冷蔵庫から大量の内の1本だけビールを取り出した。 プシッと小気味良い音を立てて開けて、口を付ける。 付けるだけで、何故か飲まない。 視線もすぐ缶ビールからシンジに戻った。 自室へ向かうタイミングを失ってしまった。何か言われそうだが、ミサトは一向に口を開かない。 ――ブオォー…… 予想通り誰も片付けておいてはくれなかった洗い物でも済まそうと思った瞬間、洗面所からアスカがドライヤーを使う音がした。 それと同時に漸くミサトが話し始める。 「ねぇ、シンジ君」 余りに真摯な表情のまま、そして口元を缶で隠したまま話すのだから、ついシンジは返事を忘れる。 「余り詮索するつもりは無いんだけど、私、何も知らないワケじゃないのよ。貴方を心配してるからこそ言わせてもらうけれど……」 ミサトの視線が下へと落ちる。 「前にも言ったと思うけど、貴方1人の体じゃないの。もう少し大事にしなさい。若いからどうしようも無い、っていうのも有るなら……」 ミサトが目を向けるとシンジも視線を外していた。 「……レイは兎も角、シンジ君もアスカも年頃だから監視みたいな事は極力避けたいじゃない? 今の所司令の耳には届いていないけど、リツコとかにバレていつ情報として知られるかわからないわ」 シンジはここで「彼女は既に知っている」と切り出す程子供ではない。 「そうなった後は、どうなるかわかるでしょ?」 ゆっくりと1度頷くシンジ。 別に体を売っている事実さえ無ければ、朝から晩まで監視し続けられても文句は無いのだが。 ――ブォン ドライヤーの止まる音。 真似てミサトも会話を止める。 程無くしてカーテンが開き、アスカが顔を出した。 「2人して何話してたのよ? シンジ、アンタ着替えてもないじゃない」 「ちょっちね。悪い事は痛い目見る前に辞めておきなさい、ってお話をしてたの」 何の事かわからないアスカは当然眉を寄せる。 「……何よ、アタシ達が悪い事してるってぇの?」 「違うわよ。もしもの例え話。悪い事するとしたら、誰かに迷惑掛けたり、自分が痛ぁーいってなる前には止めておく事って言いたいだけ。勿論、悪い事は最初からしない方が良いんだけど」 最後に取って付けたような正論をもってミサトの説法は終わったらしい。 「さ、明日休みだからって、2人共夜更かしは駄目よぉ?」 「はぁ~い。どっちにしろアタシは明日出掛けるから早く寝るわよ」 「シンちゃんは? 出掛けないんでしょ?」 「……はい」 明るい口調の質問だが、Yes以外の返事は許されない。 「じゃあバカシンジも洗い物は明日にして、とっとと寝る事ね。明日朝からゆーっくりやれば良いんだから」 シンジが越してきた初日にジャンケンで決めた当番制度は辛うじてその紙が残されているだけで、基本的に家事全般はシンジの仕事という暗黙のルールが成り立っていた。 今は冷蔵庫で気持ち良さそうな寝息を立てているペンペンですらも餌の準備から風呂掃除に至るまでシンジが行うと認識している。 幸いなのは全員がその現状で満足している事。シンジも含めた全員が。 「じゃ、おやすみぃ~」 リビングを抜けて元はシンジのそれだった自室にアスカは入っていった。 「さて……と。シンちゃんシャワー入ってる間、ドライヤー使っても良い? すぐ終わるから」 「良いですよ」 いつもの、陽気で朗らかで仕事は真面目なのに私生活はその堅さを全く見せないミサトに戻っている。 どこか少し安心してシンジは風呂へと続く洗面所へ向かった。 電気をつけてカーテンを閉めて、1人きりになって。 ミサトはただ抑えたいだけではなく、純粋に心配してくれているのだと考えて。 しかし結局は自分を見てくれているワケではない、との考えに行き着いてしまう。 エヴァのパイロットが欠けては困るから。ましてや折角シンクロ率や戦闘に関する操作技術が好成績を出し始めているのだから。 きっと自分を、シンジをシンジとして見てくれたのは、誘拐犯だったあの男の、あの瞬間の瞳だけ。 全裸になり服を洗濯機に入れて浴室の扉を開く。 中に有る顔を見るだけの大きさの鏡に映った体は、特に怪我等をしていなかった。 怖かったし痛かったし少しでも早く離れたいと思っていた筈なのに……こうしていざ離れると何かがシンジの胸を襲う。 虚しさなのか、寂しさなのか。はては男に対する間違った愛おしさなのか。 浴室の外たる洗面所で物音がした。ミサトが髪を乾かす為に見計らって入ってきたのだろう。 彼女が心配する理由が、シンジを大切な『家族』だと思っているからだとは、扉1枚隔てて鳴り始めたドライヤーの音は教えてくれない。 終 Index
https://w.atwiki.jp/aaabbb/pages/68.html
事の始まりは以前、シンジが作ったジャーマンポテトにあった。 彼が作ったそれは非常に美味しかった。 カリカリに焼けたベーコン、ピリッと黒コショウの効いたジャガイモ、 そして口の中に広がる爽やかなレモンの風味。 確かに今まで本場ドイツでこれよりも美味しいジャーマンポテトは何回も食べた事がある。 しかし明らかに自分の為に作られたそれは格別であった。 そしてアスカは思った、自分もシンジの為に料理を作ってあげたいと。 悩んだ結果決めたのが『肉じゃが』。 以前親友の洞木ヒカリが恋人の鈴原トウジに『肉じゃが』を作った時の鈴原のセリフが浮かんだ。 「かぁ~! やっぱ肉じゃがはええなぁ、家庭の味、オカンの味や!」 「これで落ちへん野郎はおれへんで!」 と勝手に惚気られ失笑したものだが、今になって考えを改める事にした。 そしてシンジがたまに作る『肉じゃが』を思い浮かべ材料や調味料を調達、調理。 結果、惨敗である。 さらに許せなかったのがシンジの態度、夫婦になって初めてつかれた嘘。 自分の性格を分かってくれていれば正直に言われたほうが、まだマシであった。 それなのに「美味しい」と言い、食べ続けた。その行為が彼女のプライドを深く傷つけた。 一方のシンジも自分の行った行為に自己嫌悪に陥り、しばらく食卓から動けなかった。 嬉しそうな顔を目の前にして「不味い」とは言えず、 その結果、彼女を深く傷つける形となった。 もう二度と傷つけまいとあの赤い海で誓ったのに・・・ 咄嗟についた嘘、それ自体許されるものではなかった。 自分たちが夫婦になるにあたり決めていた事の一つ・・・ それが『お互いに嘘をつかない事、隠し事をしない事』であった。 お互いの全てをぶつけ合い、もう嘘をつく必要も、隠し事もなくなった。 新たにそれらを作り出すことなく、一緒に生きようと誓い合ったのだ。 シンジはある不安に襲われた。 嘘を言ったことにより自分たちの関係が危ういものになるのではないかと言う事に。 その不安を解消すべく重々しい足取りではあるが一歩一歩、寝室へと歩みを進めていった。 「違う」 枕を抱きしめながらアスカをポツリと漏らした。 「シンジは悪くない・・・」 そう言うとアスカは今までの思いを振り返ってみた。 シンジと結ばれるにあたり「もう自分の無駄なプライドは捨てる」と心に決めたはずなのに、 「教えて」や「一緒に作ろう」の一言も言い出せなかった。 そして、自分の失敗に対しても「分かってくれれば」などと思い込みをしてしまった。 そんな自分に対して腹立たしくもあり、悲しかった。 ・・ ・コンコンッ・・・ 弱々しく叩かれるドア。 「アスカ・・・ 入るよ」 彼の声を聞くとベッドから飛び起き、声の聞こえる方へ駆け寄っていった。 ドアが開けられると、その瞬間に彼に抱きつき、泣いた。 彼の胸の中に頭を埋め、ただ、ひたすらに泣き続けた。 その思いを分かったのかシンジは優しく受け止め、その朝焼け色の髪を撫で続けた。
https://w.atwiki.jp/aaabbb/pages/76.html
アレからアタシはシンジと一緒に料理を作ることとなった。 一通りの料理の作り方を伝授して貰ったが、どうもアタシはチャーハンや野菜炒め、 揚げ物といった類の料理を作るのが好きな様だ。そのことをシンジに言ったら 「アスカらしいね」 などと、のたまってくれたので意味はわからないが、なんか腹立ったので一発小突く。 しかし、どうも煮物や蒸し物などといったチマチマした料理はどうもアタシの性に合わないらしい。 あっ! そうか、そういう事か! 焼く・炒める・揚げるといった料理は攻め、煮る・蒸すといった料理は受けという事か! シンジの発言の意味が分かったので、もう一発小突いてやった。 ま、それは置いといて、 今日はシンジが料理を作る番。献立はカレー。シンジはカレーを作るのに2時間以上かけて作る。 今は玉葱を弱火でコテコテと炒めている。あまりにもゆっくりしているので苛々して 「何で、そんな事やってんのよ」 と聞いてみたら 「アスカ、料理は手間と愛情をかけて作るんだよ。食べてくれる人が『美味しい』って 言ってくれることを想像しながらね」 なんて抜かしやがったから 「ふん! なにキザったらしい事言ってんの! アンタには似合わないのよ、バカ!」 って言ってやったわ。 すぐに後悔したけど・・・ 何でか?っていうと、ふと料理をしているシンジの手元から視線を変えてコイツの顔を覗いたら すっごく、優しい顔をしてたの・・・ そう、アタシはこの顔、この表情が好き。 キスしてくれるとき、抱き締めてくれるとき、アタシを愛してくれるとき シンジはこの顔を見せてくれる。とても優しい表情。 そうか・・・ シンジはアタシに『美味しい』って言わせたくて料理してるんだ。 失敗したわ、みすみすこの顔を今まで見逃していたなんて! 「何か僕の顔に付いてる?」 じぃ~~っとみてるアタシに、シンジは声をかけてきた。キョトンとした顔が無性に腹が立つ。 「バカ! アンタはちゃんと料理に集中してなさい!」 「何だよ、それ・・・」 「いいから、早く!」 そうそう、その顔その顔! この表情を見て、ちょっとだけアタシの黒い部分が出てきたわ。それは独占欲。 「シンジ、一つ約束して! アタシ以外の人と一緒に料理しないで! 特に女と!」 「何で?」 「いいから、約束して!」 「??? 分かったよ」 そう、この優しい表情はアタシだけのものにしたいから・・・ そんなこんなで出来上がったカレーはいつも通り美味しかった。 いつもならどんなに美味い料理が出来ても「まぁまぁね」としか言わないんだけど ちょっと魔が差したのね、今日は特別に言ってやったわ。 「美味しいわね、このカレー」 極上の笑顔がアタシを襲う。 駄目! そんな顔見せられたら、もう『美味しい』としか言えないじゃない! バカシンジ!! おしまい
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おそらく、まだ慣れない手つきで料理するアスカがこぼした、コンロ周りにある食材を 求めてゴキブリが出てきたのだろう。だから片付けようといったのに・・・ 「助けてよ・・・ シンジ・・・」 いつもとは違う、怯えきった仔犬のような瞳で僕に訴えかけてくる。その何とも儚げな 姿にさっきまでのアスカへの不満はどこかへ飛んでいってしまった。 そして恥ずかしながら僕は魔王から麗しの姫君を守る騎士になったかのように思えてきた。 「大丈夫、アスカは僕が守る」 そしていつもなら絶対に言わないような歯の浮くような台詞を出してしまった。 僕は剣(新聞紙を丸めたヤツ)を握り締め、魔王(ゴキブリ)と対峙。狙い定めて一閃。 パァアン!! 見事、魔王を打ち倒した。 「やったよ、アスカ!」 「ありがとう!! シンジ!」 ヒロイック・ファンタジーもののラストシーンのような雰囲気。 ただし、悲しいことに現実は甘くない。 【一匹見かけたら三十匹はいると思え】 ブゥウゥゥゥ・・ン ポテッ 感動のシーンの最中に登場する大魔王のように一匹のゴキブリがアスカ目の前に飛来。 あまりの急な出来事に今度は声すら上がらないようだ。しばらく石化したアスカはその後 復活し、凄まじい速さで物置にある対ゴキブリ戦用決戦兵器の数々を持ち出してきた。 今そこにあるアスカの顔は麗しの姫君ではなく赤鬼。エヴァ弐号機のように顔を紅潮させ、 その目にはありありと怒りが感じられた。 怖すぎるよアスカ・・・ 「この! 何で居なくならないのよ! このクソゴキども!!」 たたき棒でゴキブリを追い掛け回すアスカ。それを嘲笑うかのように逃げ延びるゴキブリ。 「チィ! これじゃ 埒が明かないわ!! 次!」 たたき棒からスプレー式殺虫剤に持ち替え、ゴキブリに向け噴射。 ちょっと、アスカ! こっちに噴射口向けないでよ! ゲホゲホッ! とりあえず一匹は仕留めたが、この騒ぎのせいでチョロチョロと2~3匹見え隠れする。 ぷちん・・・ あっ ヤバい・・・ アスカが完全にキレた。 「殺してやる、殺してやる、殺してやる、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシ・・・・」 そして、ついにアスカは対ゴキブリ戦用最終兵器を取り出した。 「くらえ!! N2・バァル○ン・グレネードォ!!!」 妙なネーミングを付け、買い置きしていたバル○ンを部屋ごとに撒き散らかすアスカ。 ヤバイって、アスカ!! 僕は急いでパソコンやテレビ・コンポなどの機械にタオルなど をかけて回る事にした。一方のアスカは 「この使徒にも勝利した私達がアンタ達に負ける訳が無いのよ!! 殲滅、殲滅ぅ!!」 と殆ど狂気に取り付かれ騒いでいた。 ・・・明日は近所の人達に謝りに行こう。 家中が白い霧で覆われたので僕はアスカの腕を掴み、ベランダへと出てきた。 しばらくして落ち着いたのか、また仔犬のような瞳で僕を見つめて一言。 「ごめんね・・・ シンジ」 全く、ずるいよアスカは! そんな顔したアスカを怒れる訳無いじゃないか! 「クシュン」 アスカは可愛いくしゃみを一つした。 まだ、暖かくなってきたとはいえ夜は冷える。 二人とも薄着でベランダに出たものだから僕も少々寒い。今さら家の中には入れないし・・・ 僕はしゃがんでるアスカを後ろから抱きしめ、朝日が昇るまでの間お互いで暖をとる事にした。 おしまい
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「ピンポーン」 掃除が終わったお昼過ぎアスカはテレビを観ていた アスカ「誰だろ?」 アスカ「は~い今行きます」 玄関へ向かう アスカ「レイじゃない」 玄関先には、中、高、大学と一緒だった綾波レイが立っていた レイ「ごめんなさい。突然」 アスカ「別にいいわよ。でも連絡してくれれば外で会ったのに」 レイはうつ向き加減に レイ「貴方と話しがしたかったから」 アスカ「とにかく上がって立ち話も何だし」 アスカは紅茶を用意しつつレイを招き入れた レイ「ありがとう」 アスカはテレビを消しながらレイ前に座る アスカ「で何?話しって」 レイ「貴方、今幸せ?」 アスカ「何よ突然!」 アスカは恥ずかしいがりながら アスカ「ん~まあ幸せかな」 レイ「そう」 アスカ「なんなのよ?一体、何かあった訳?」 レイは少し間を置いて レイ「昔、碇君は私の事好きだったって知ってる?」二人の間に張り詰めた空気が流れる アスカ「……知ってたわよ…」 アスカ「だから何だって言うのよ!」 アスカ「あんた今更喧嘩売りにきたの…」 アスカの言葉を消すようにレイ「違うの!」 レイ「違うの…よ…」 レイの目からは涙がひと雫こぼれ落ちた。 アスカ「レイ…」 レイは暫く泣いた後 レイ「…ごめんなさい」 レイ「ちゃんと話すわ」 そういうとレイは冷たくなった紅茶を一杯飲んだ レイ「中学の時私、碇君に告白されたの」 レイ「でも断ったわ。他に好きな人がいるって」 アスカ「意外ね。貴方にシンジ以外に好きな人がいたなんて」 アスカは多少意地悪く言った アスカ「あの頃の貴方達とてもお似合いだったわよ」 レイは寂しそうに笑い レイ「そう。貴方にはそう見えてたのね」 アスカ「あの頃の友達は誰だってそう言ってたわ!」 レイは一呼吸置いて レイ「貴方が好きだったのよ」 アスカは口をパクパクさせながら アスカ「は?えっ何?」 レイ「いえ、いまでも愛しているわ」 アスカ「それって友達としてとかじゃ…ないのよね…」 レイはアスカの百面相を慈しむかのように レイ「えぇ、違うわ。貴方を女性として愛してる」 レイ「高校の時なんて貴方を見てていたくて同じ部活に入ったのよ」 あの頃を思いだすように笑うレイ アスカ「そうだったんだ。レイに陸上は合わないと思ってたんだ」 アスカ「てっきりシンジのために入ったのかと」 レイ「総て貴方の為よアスカ」 そういうとアスカに近づいた。 続く アスカ「ちょっ、ちょっと」 アスカは慌てて立ち上がろうとしたがレイに手首を捕まれた レイ「アスカ…」 アスカ「レ、レイ」 アスカ「ちょっと私にその気なんてないんだから」 するとレイは突然笑い出した。 レイ「あははっ何本気にしてるのよ。私がレズな訳ないじゃない」 アスカ「へっ」 レイ「冗談よ冗談。本当アスカってからかいがい、があるわ」 お腹を抱えながら笑うレイ アスカ「レ~イ~」 鬼の形相のアスカ 倒れこんでいるレイに馬乗りになる アスカ「レイが擽りに弱いの知ってるんだから」 脇に手をもっていくと レイはアスカの腰に手を回し引き寄せた アスカ「えっ」 レイ「愛してるわアスカ」レイはアスカに唇を押し当てた レイの本当の気持が唇を通してアスカにも伝わった アスカ「んっ…」 レイは舌でアスカの唇をつつく その舌を受け入れるアスカ。キスをしている時間はレイには永遠の刻に思えた。 アスカ「満足した?」 そう言って少し顔を離すアスカ レイ「えぇ…」 涙を湛えた瞳で真っ直ぐアスカを見る レイ「ありがとう…アスカ…」 アスカ「最初で最後よ」 レイ「最初で最後ね」 二人は微笑んだ 窓から溢れる光は黄昏の色に輝いていた 続く
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